フランスあれこれ

先月のフランス・ナントでの学会の報告。まず何はともあれ,食品の機能性成分を探し出す新しい方法論につながる(と信じている)予備実験に関しての発表そのものは,興味を示してくれる先生方もこちらの期待以上に存在していることが分かって,なかなか有意義な時間を過ごしました。特に,学会3日目に催された船上ディナーは,遡る川の岸辺にたたずむお城が幻想的に不意に現れたりして,印象深いものでした。


ところが,異国への旅としては,これほど予期せぬ出来事の多かった旅も珍しい。ホントに毎日が「驚き」の連続。初めてのフランスの旅は,強烈な印象の残るものとなりました。


ナント駅で乗り込んだおばあさん運転のタクシーにホテルの名を告げると,そんなホテルは無いとまずは一蹴され,仕方なく地図を見せて「とにかくここへ行ってくれ」という始末。いざその場所についてみると,なるほどおばあさん運転手のいうことも道理で,あたりを見渡してもホテルらしい建物の見当たらない工事現場前。よおく目を凝らして,ようやくホテルの看板を見つけて一安心したのもつかの間,中に入ると従業員がいないどころか,フロントにシャッターが降ろされている状況には,まさに悪夢を見ている思いでした。結局,到着したその日が日曜日だったため従業員の定休日(!)と重なり,金庫の中に用意されていた部屋の鍵を自分で取り出して,ようやく部屋にたどり着くという有り様。しかも,そのホテルは9月開業予定がまだ工事中ということで,エレベーターが動かず,4階の部屋まで非常階段で移動するというおまけ付き。


これだけでもまれに見る体験をしたかと思いきや,まだありました。ナントからパリへ戻る電車を待つ駅のホームに,発車時刻ぎりぎりに滑り込んできた列車に乗り込もうとすると,キップに刻まれた指定席のある8号車が何度確認しても見当たらないのです。仕方なく駅員に問いただすと,「とりあえず18号車に乗ってくれ」という返事。なんだキップの印刷ミスかと思っていざ乗り込むと,その席にはすでに弁当を広げたおばさん方が座っているという状況。何かのトラブルでその車両が急遽使えなくなったとかで,乗り込むはずの席が消えてしまったたくさんの乗客から一斉に叱責の嵐を受けていた車掌さんが気の毒ではあったのですが,僕たちもとりあえず文句を言ってみたところ,次の駅で乗り込んでくる客をみてから空いた席に案内するからという返事でした。いやはや,フランスでは客商売の感覚がちょっと違うようです。