4年越しの成果発表

4年前にこつこつと始めた研究の成果が,ついにようやく「論文」という形で日の目を見ることとなりました。Journal of Biological Chemistryという,生化学の分野では一目置かれている雑誌に投稿したのは,まだ汗をかきながら作業をしていた8月のことでしたから,実に半年にわたる交渉の末に,ようやく受理となったわけです。さすがに審査は厳しく,実験の追加や表現の見直し,引用文献の再考など,いろいろな注文がつきましたが,3回目の手直しの後にやっと出版の許可が下りました。この論文が製本版で出版されるのは4月とのことですが,それまではオンラインで自由に読むことが出来ますので,こちらから是非どうぞ(http://tinyurl.com/63nx7hx)。


この論文は,ヘパリンという硫酸基をたくさんもっている糖鎖の特定の部分だけを認識して,その場所に結合するペプチドを発見したというもので,天然には存在しない12残基の配列からなるペプチドであったため,「HappY(Heparin-Associated PePtide Y)」という名前を付けたということが一つ大きな仕事です。また,論文中でも述べていますが,ヘパリンの機能として知られている抗凝血作用を阻害するはたらき(ただし,薬品として使えるレベルではありません)や,神経細胞に作用する成長因子と競合して神経突起の伸展を阻害するはたらき(こちらは薬品としても可能性があります)をこのHappYがもっているということを実験的に示すことが出来たのも大きな成果となります。このペプチドをバイオツールとして利用することで,目に見える形で実験することが難しいこの分野の仕事が大きく発展することを密かにもくろんでいます。


というわけで,今年に入って受理された論文はこれで3報目となりました。投稿中のものが1報ありますが,現在執筆中のものが4報ありますから,なんとかあと2報を今年中にまとめて年間10報出版の目標をクリアしたいと思います。ちなみに,昨年は5報出版したのですが,すべて他力本願でしたので,今年からはコンスタントに成果を発表していけたらいいなと思っています。今年は厄年ですが,逆転の発想で頑張ります。