十八世名人誕生,森内ついに

将棋の第65期名人戦で,森内名人が第7戦のフルセットの末にタイトルを防衛し,これで通算5期目の名人位となって「十八世名人」の称号を獲得しました。ちょうど10年前に谷川が十七世名人に就いたときには,次は羽生で決まりと誰もが思っていたはずですが,同い年の森内がその羽生の5期目をことごとく阻止して,そしてついに自分がその地位に就いてしまいました。いやはや,なんともうれしい限りです。


どうしても羽生の影に隠れがちな森内ですが,その名前は小学生のころから知れ渡るほどの才能の持ち主ですし,何よりこのシリーズ中に達成した700勝の時の勝率は,羽生,大山,中原に次ぐ4位というのですから,全くもって十八世名人として異議なしです。


そもそも将棋の名人とは,江戸初期にまでさかのぼる歴史ある制度です。はじめは,大橋本家と分家,伊藤家が幕府から将棋指衆と認められ,この三家から将棋界最高位の存在として選ばれる終身制でした。明治以降は将棋界の総意で有力者を推挙する形になっていたものの,相変わらずの終身制でしたが,十三世名人に就いた関根金次郎が決断を下して,1935年に現在に続く名人戦が始まりました。そして1949年には,通算5期獲得者に永世名人の称号を贈ることが決まったというわけです。この間,木村義雄大山康晴中原誠谷川浩司がそれぞれ永世名人となっていましたが,次に羽生が就くとまた終身制に戻ったかのように間があくなあ・・・,というのがこれまでのおおかたの予想でした。


もっとも,名人戦といえば一人の持ち時間が9時間(二人合わせると実に18時間)という将棋界最長の対局を強いられるタイトル戦ですから,受け(守り)に真骨頂を見せる「剛鉄流」の森内には最も棋風にあったタイトルなのかもしれません。いずれにしても,僕と同い年の森内の快挙に,こちらも励まされる思いです。