がんばる後輩・・・アメフト編

前回の話題にのぼったNFLは,アメリカンフットボールの最高峰として世界をリードする集団で,野球のメジャーリーグとは違って,マイナーリーグから積み上げてトップに登り詰めるという仕組みではないこともあってその一員になるのはまさに至難の業です。今や活躍する日本人選手を普通に見かけるようになった野球(MLB)に加えて,先日話題となったアイスホッケーの福藤選手(NHL)とバスケットボールの田臥選手(NBA)はそれぞれ唯一の日本人プレーヤーですが,いまだアメリカンフットボールNFL)では日本人プレーヤーが誕生していません。若乃花が引退した直後にNFLに挑戦して話題となりましたが,ポジションがTE(「タイトエンド」は攻撃陣の中でパスキャッチをすることもあればQBの守備も兼ねなければならない選手で,戦術を誰よりも熟知していることが求められる)ということもあって,突然アメリカに行ってどうなるわけでもなく,その後も日本人プレーヤーは誕生していません。日本人選手が誕生しない理由は,体力不足というのももちろんですが,一番の壁は英語力だそうです。アメフトは,どのスタジアムに行っても10万人ほどの大々観衆の中で,相手の陣形を見てとっさに戦術を変更し,それをQBが大声で伝えたものを各選手が聞き取ってプレーするというスタイルのスポーツですから,抜群の英語聞き取り力がなければ本番で使ってもらえるはずもありません。


このNFLの下部組織に相当する「NFLヨーロッパ」の日本人ロースター候補選手の選考会(トライアウト)がありました。NFLヨーロッパは,その名の通りヨーロッパを舞台に行われているNFLに所属するチームのリーグ戦ですが,ここで活躍した選手がNFLの舞台に登っていくことも珍しくはありません。当然のことながら,この一員になることも至難の業というわけですが,ここでの活躍が認められればその先にはNFLへの抜擢という道が開かれているというわけで,日本人としてはまずこのロースターに選ばれることが第一関門というわけです。


ところで,日本でアメフトというと,関東学生アメリカンフットボール連盟と関西学生アメリカンフットボール連盟がその頂点にライスボールを据えていることもあって有名で,社会人も関東と関西にXリーグという組織が存在します。しかし,その他の地域では全く行われていないかというとそんなことはなく,僕の母校である東北大学のアメフト部(ホーネッツ)はかなりレベルの高いことで知られています。その証拠に,今回のトライアウトには関東と関西のリーグに所属するチーム以外から唯一,東北大学から萩山選手が参加していました。彼は現役の理学部4年生で,ポジションはWR(「ワイドレシーバー」はQBからのパスをキャッチする選手で,瞬発力と正確な捕球術が求められる)とのこと。東北リーグではQBも兼ねていたといいますから,NFL用語でいうところの典型的な「スラッシュ」です(QB/WRと書くことから「/」と呼ばれます)。


そして,結果はどうだったかというと,残念ながら萩山選手はロースター候補には選ばれませんでした。英語聞き取りと表現ではだいぶ良い評価だったようですが,残念でした。しかし,NFLも粋なはからいをするもので,パスをキャッチする素質を高く評価し,あとは体力をつければさらに成長するだろうということで,萩山選手は「特別強化選手」に唯一の指名を受けました。これは,NFLヨーロッパのリーグ戦には参戦できないものの,来月にフロリダで行われるキャンプには,ロースター候補選手6人と共に参加することが出来るということで,まずはあっぱれです。なにしろ,他の選手は全員社会人ということですから,大学生でしかも関東・関西以外から唯一選ばれたということで,ますます精進して欲しいですね。また一人,応援する後輩が増えました。