勝負の世界を選んだ工学部生

こちらの大学では卒業を控えた4年生が毎日卒論の最後の仕上げに励んでいます。そんな中,3年生はすでに始まっている就職活動に動き回り,ちらほらスーツ姿の学生をキャンパスでもみかけるようになってきました。それにしても,まだ大学生として完成していないはずの3年生のどこをどう見て企業は適性を判断しているのでしょうか。なんとも,やりきれない思いがしないではありません。


そんな中,先日朝青龍の20回目の優勝で幕を閉じたばかりの初場所では,国立大出身では史上3人目となる「舛名大」の初土俵と,そしていきなりの序の口優勝決定戦への登場で,世間を大いに沸かせていました。彼は,名古屋大学工学部の現役学生で,夏までは大学院への進学を希望していたそうですが,残念ながら入試に失敗しての決断とのこと。ちなみに,彼が所属する名古屋大学相撲部は2005年・2006年の全国国公立大学対抗相撲大会団体戦で2連覇中の強豪ですから,その主力が角界入りするのはそれほど不思議ではないのかもしれません。しかし,「イクラの中のATPの分析」を卒論テーマにしていることからして,まあ想定外の進路といえるのではないでしょうかね。とはいえ,師匠の千賀ノ浦親方といえば自身が拓殖大出身で,同じ拓殖大出身の栃の山を育てるなど,現在も大学相撲部出身の力士を部屋にずらっとそろえている元関脇・舛田山ですから,その親方に見込まれた逸材ということで是非頑張って欲しいですね。こんな就職先を選べるのも,限られた人だけやもしれませんから。


さてさて,舛名大が是非に対戦したい相手は,同じ国立大(琉球大学)出身で現在序二段の一丿矢だそうです。彼は最年長力士として知られ,現在45歳。番付こそ全く上がらずにいますが,相撲の奥深さを究めているという,まさに理系出身の力士なのです。もう来場所には舛名大の望み通り対戦がありそうですから,早くも夢の実現ですね。そして,その対戦の前に彼にはもう一つの難関,「卒論発表」が3月2日に待っているそうです。是非にもきちんと卒業して,就職先の角界で大きな足跡を残して欲しいなと思います。