国立大学法人の運営費交付金

新聞報道によると,文部科学省が画策している案として,法人化された国立大学を「国立」たらしめているはずの運営費交付金を各大学が獲得している科研費の配分割合に応じて支給することを考えているそうです。そうすると全部で87ある国立大学の中で,今年よりも交付金が増えるのはわずか16大学にとどまり,残りの71大学は大幅に交付金が減るとのこと。ちなみに,岐阜大学は40%以上の交付額の減少が試算されています。科研費は,文部科学省が各研究者に配分する科学研究費補助金の略で,毎年10月頃に応募された研究案に対して各学会から選任された学者が翌年3月末までに審査し,おおよそ2割の確率で4月に採用されるとその年度の3月までの研究は計画通りその資金を使って行うことができますが,不採用ということになるとはて1年間何をしようかという事態なってしまうという,いわゆる競争的研究費です。


運営費交付金はほぼ100%が職員の給料に使われていますので,一気に減額ということになるとちょっとやそっとの混乱ではすまないと思うのですが,果たして文部科学省はどういう効果を狙っているのでしょうか。確かに競争原理を大学にも持ち込んで活性化を図ろうとするのは分からないでもないですが,科研費という文部科学省がもちえる唯一の指標を基準として,様々な人々の生活に関わるところを脅かそうとしているのはいかがなもんでしょうか。実際の教員の活躍の場は,何も科研費の獲得だけにとどまるはずもなく,農水省厚労省経済産業省からの競争的研究費もありますし,いろいろな財団からの研究費の獲得や民間企業との共同研究で獲得する研究費もその金額は少なくないはずです。それらはいっさい無視されるというのも,なんとも合点がいきません。そんなことは言っても国立大学法人文部科学省の管轄下にあるのだから,とりもなおさず科研費の獲得を第一に考えなさい・・・というお上の通達なんでしょうが。


とはいえ,やっぱり,実現するようでは世も末だと思うのは大学人の甘い考えでしょうか。