新年度,始まる。

2009卒業記念

平成22年度が始まりました。


東京から岐阜に移ってきた5年半前の10月。その時に1年生で,最初に実習の担当をした学生たちも,修士課程を修了し巣立っていきました。おまけに,この春の卒業生は,初めて2年生の講義を受け持った学年でもあり,ささやかながら自分の「初めて」を知る学生たちが巣立っていきました。なんとなく,感慨深いものがあります。今日の写真は,卒業式の日にいただた卒業生からの花束。なんとなく,年々豪華になっていっているような気がするのは,ありがたくもあり,申し訳なくもあり。


しかし,ゆっくりと思いを巡らしている暇もなく,新入生に対するいろいろな行事が目白押しです。研究費の報告書の締切も矢継ぎ早に迫ってきます。まさにフル回転。最近,新聞で取りざたされた国立大学のランキング(朝日新聞http://www.asahi.com/edu/news/TKY201003290155.html)も発表され,当事者としてはなんとも腰を落ち着けがたい環境に取り囲まれていますが,無理難題が次から次に降りかかってくるのが大学のおもしろいところでもあり,なんとか目の前に現れる事々を悉く楽しみたいと願いつつ日々を過ごしています。


今年度の目標は,「無事これ名馬なり」。なにしろ,今年は厄年なもので,とにかく健康第一です。ちなみに,この格言(?)は,文豪・菊池寛の造語で,禅語の『無事是貴人』をもじって,好きな競馬のために作った言葉です。それが証拠に,本人が「優駿」の創刊2号に掲載されたエッセイで語っています。そして,もともとの『無事是貴人』とは,臨済録の中の悟りの教えで,「無事」という仏や悟りや道の完成を他に求めない心の状態が,「貴人」すなわち悟りを開いた人や道が完成した人に近づくことを表わした言葉だそうです。間違いを恐れずに解釈すれば,あれやこれやと外の情報をいろいろかき集めて自分に塗りたくって,これが自分だと人に見せるのではなく,自分の奥底にもともと持ち合わせていたものをとことん掘り起こして,心の内から自分を人に見せるような修業が大事だと語っているのかと思います。


大学人となって5年が過ぎ,ここいらで,大学で何をしたいのか,大学人としてどこに向かって行きたいのか,「無事これ名馬なり」の根底にある禅の教えをもふまえて,とことん身の内を掘り下げながら,いろんなことをひっくるめて,この一年は「健康第一」に過ごしていきたいと思います。